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Vol.2 認知症対策に家族信託という選択肢!成年後見制度と比較し、違いをご紹介

印刷用ページを表示する 2022年1月4日更新

認知症

資産管理における認知症対策について考えたことはありますか?

誰もが認知症になる可能性があります。資産所有者が認知症を患ってしまったからといって、ご家族が代わりに資産を管理することはできません。そのため、事前にできる対策は講じておきましょう。

今回は、資産管理における認知症対策に役立つ、家族信託という制度を紹介します。
知っておくだけで役立つ内容ですので最後までご覧ください。

親が認知症になったらどうなるの?

親が実際に認知症になってしまった後のことを想定し、具体的な対策を済ませている方は少数派でしょう。

厚生労働省によると、認知症高齢者は今後ますます増加すると予測されており、2025年には65歳以上の約20%が認知症を発症すると推測されています。認知症は誰もが真剣に考えるべき問題です。

認知症になってしまうと、本人の意思を確認できなくなるため、契約や財産に関する重要な取引ができません。たとえば銀行から預金を引き出せない、生命保険の受取人も変更できなくなる可能性があります。また自宅を含む不動産の売却やさまざまな手続きができなくなることもあり得ます。このような結果にならないためにも、事前にできる対策は講じておきましょう。

出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について

任意後見制度、法定後見制度の違い

認知症になった人はその度合いによって判断能力が判定され、様々な契約の締結や株式の売買、預貯金の引き出しでトラブルが起こりえます。そういった場合に利用できる制度が、成年後見制度です。成年後見制度では、家族や法律専門家などが後見人となり、本人の財産や契約を代わりに行えます。成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度の2つがあります。任意後見制度も法定後見制度も本人の財産や権利を保護する点で同じです。

一方、異なる点もあるため、表を用いて解説します。

任意後見制度

法定後見制度

利用する制度の決定タイミング

本人の判断能力が衰える前

判断能力が不十分になってから

ご本人の意向

反映される

反映されない

資産の活用

家庭裁判所が許可する範囲の支出しか認められない

家庭裁判所が許可する範囲の支出しか認められない

費用

  • 公証役場での任意後見契約手数料約2~3万円
  • 専門家に依頼する場合はその報酬
  • 各種の証明書等を取得する費用
  • 任意後見監督人への費用
  • 本人の鑑定が必要となった場合における鑑定費用の負担
  • 各種の証明書等を取得する費用
  • 後見人への費用

任意後見制度と法定後見制度の大きな違いは制度の利用を決めるタイミングです。

任意後見制度が本人の判断能力が低下する前に後見人候補者と契約を結ぶのに対し、法定後見制度は本人の判断能力が低下した後に親族や行政機関が後見人を申請することになります。任意後見制度は判断能力が低下する前に契約を結ぶため、自分の代理人である任意後見人を自らの意思で選べます。しかし、法定後見制度では自らの意思では後見人を選べず、最終的には家庭裁判所が決定します。

コラム:法定後見の種類

法定後見制度には「後見」「保佐」「補助」の3種類があり、この分類は本人の判断能力の低下度合いによって決まります。本人の判断能力の低下度合いは、医師の判断のもと決定されます。

最も判断能力が低下している場合に対象となる「後見」は、財産の管理や身上監護、契約行為を家庭裁判所が選んだ成年後見人に任せる制度です。

「保佐」は日常生活に問題がなくても、契約や重要な取引を行うことへ不安がある場合に該当します。すなわち、中度の認知症であれば保佐の対象です。支援する人を保佐人、支援される人を被保佐人と呼びます。保佐人も成年後見と同様に、家庭裁判所が選任します。被保佐人は重要な行為(金銭の貸し借りや高額なものの売買契約等)を1人で行えず、保佐人の同意がその都度必要です。万が一、同意がなかった場合は、保佐人もしくは被保佐人が後から当該行為を取り消せます。

「補助」は軽度の認知症や精神障がいの場合に適用され、保佐よりさらに限定的な支援です。補助する人を補助人、補助される人を被補助人と呼びます。補助人は家庭裁判所が選任する点では先述の成年後見や保佐と変わりません。異なる点は補助人の権限が同意権と代理権の2種類にわかれることです。そして、両者とも権利の対象は審判で特定された行為に限られます。

コラム:商事信託と民事信託の違い

信託には、商事信託と民事信託があります。

商事信託とは、信託会社や信託銀行が財産所有者から財産を託され、管理や承継を行うことです。対して、民事信託とは、財産所有者の家族等信頼できる人に財産が託され、管理や承継を行うことです。つまり、財産を託す相手が違います。商事信託は資産管理をプロに任せるため、家族の負担が少なく安心感もあるでしょう。しかし、信託できる財産が限られており、柔軟性に乏しいことと、相応の費用が必要になるというデメリットもあります。以前までは、信託というと商事信託しかありませんでしたが、2007年の信託法の改正を受け、家族に信託する方法が利用しやすくなりました。民事信託は家族信託とも呼ばれ、身の回りの資金の管理や自宅を始めとする不動産等が認知症で凍結してしまうことに対する対策に使えます。

親が認知症になる前に、家族信託という選択

認知症になったら

家族信託は親が認知症になる前に、財産管理の対策として活用できる手段です。

家族信託は商事信託より財産の管理における自由度の高さと低コストであることが特徴です。この制度をうまく利用することによって、意思を反映した柔軟な財産管理ができるようになります。

家族信託を利用すると具体的に以下のようなメリットがあります。

  • 保有資産を凍結させずに老後資金に活用できる
  • 家族主導で資産の有効活用や組み換えが自由にできる
  • 後見制度と比べ、事務負担やコスト負担が少ない

商事信託と家族信託のどちらを選べばいいのかわからないと仰る方もいるかもしれません。

  • 信頼して財産の管理を託せる家族がいる方は家族信託
  • 信頼できる家族がいない方、もしくは、素人が管理するには難しい資産をお持ちの方は商事信託

を基本に検討するといいでしょう。商事信託はコスト面で相応の負担がかかり、柔軟ではありません。そのため「どうしても商事信託でないとできないことがある」等、明確な理由がなければ商事信託を検討するよりまずは家族信託を検討された方が良いでしょう。

家族信託の相談なら長野銀行

今回は認知症対策になる、家族信託について解説しました。
認知症になる前提で、話し合いを進める家庭は少ないかもしれません。
しかし、誰しもが起こりうる問題のため、一度今後の財産管理について考えてみましょう。
また、本格的に家族信託を検討する際は長野銀行へご相談ください。
長野銀行なら、相続のお悩みや家族信託が必要かどうか窓口でご相談いただけます。
直接話をすることで解決につながることもありますし、安心感にもつながります。
お客さまの大切な資産をどのような想いで次の世代に遺したいのかお聞かせください。
ご希望のお客さまには、信託契約作成のために士業等の紹介もさせていただきます。

プロフィール

宮田浩志氏宮田浩志(みやた・ひろし)

司法書士・行政書士
宮田総合法務事務所代表。

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・任意後見等の仕組みを活用した「認知症による資産凍結対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。
特に家族信託のコンサルティング分野では先駆的な存在で、日本屈指の相談・組成実績を持ち、全国でのセミナー講師、TVへの出演依頼、新聞・雑誌への寄稿も多数。
著書に『改訂新版 相続・認知症で困らない家族信託まるわかり読本』、『図解 2時間でわかる!はじめての家族信託』など。

 Webサイト

宮田総合法務事務所 

個人信託・家族信託研究所

一般社団法人家族信託普及協会