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Vol.1 家族信託とは?費用がかかるの?メリット/注意点/手続きの仕方を司法書士が徹底解説!

印刷用ページを表示する 2022年1月4日更新

家族信託 解説

家族に財産の管理を託す「家族信託」。テレビ番組や知り合いからの情報がきっかけだったという方が多いようです。今回は家族信託とはどのようなものなのか、家族信託のメリットや注意点、手続きの仕方などを司法書士が解説します。

家族信託とは

家族信託とは保有する不動産や預貯金など、自分の財産管理を家族に託すことを指します。2007年の信託法改正に伴い、信託の利用が行いやすくなったことから家族信託を利用される方が拡がっています。

生前に託しておくことで、本人の意思を反映させやすく、また生前の預金等の資産が凍結される心配もないなど多くのメリットがあります。遺言書に比べ、より柔軟な資産継承方法を選択できるため、相続発生の前後において、財産の管理や処分がスムーズに行えます。多くのメリットがある一方で注意点もあるため、正しい知識を持ち慎重に行うことが大切です。

家族信託の仕組み

家族信託とは、家族に老後の財産管理を任せ、さらにその先の相続後も円満円滑に資産を引き継ぐための有効な制度です。

ご本人が元気なうちから、また万が一行為能力がなくなってからも、そして本人やその配偶者が亡くなった後も、ご本人の意向が反映された資産管理ができるのでスムーズな財産管理と資産承継が連続性・一貫性をもって実現できます。
家族信託の仕組みを下記で説明します。

 【家族信託の仕組み】

家族信託は下記の三者に分けられます。

  1. 委託者:受託者に財産を託す人
  2. 受託者:託された財産の管理処分を行う人
  3. 受益者:託された財産から発生する利益を受け取る人
  4. 委託者(受益者)は受託者の選任または解任の権利も有しています。

受託者は信託財産の管理における権限を有する一方で「善管注意義務」「忠実義務」「分別管理義務」等の義務も負わなければなりません。

  • 善管注意義務
    信託された趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって、信託事務を履行する義務
  • 忠実義務
    委託者のために忠実に責務を果たす義務
  • 分別管理義務
    委託者から信託された財産と受託者自身の固有財産を完全に分離して管理しなければならない義務

家族信託のメリットとは

家族信託には、家族間の信託だからこそ生じるメリットがたくさんあります。
ここからは家族信託のメリットを4点ご紹介します。

親世代(委託者)が認知症等になっても、金融資産を動かせます。

親世代が認知症になった際、定期預金の解約ができないなど、金融資産が凍結されます。そこで家族信託を活用することで、受託者である子世代が、親世代が貯めてきた金融資産を活用し、委託者である親世代の入院・入所や介護、そして生活費の工面等ができるようになります。

不動産を保有している場合、不動産の活用や処分が柔軟にできます。

不動産を信託することで、登記簿には、「受託者」の肩書き付きで受託者たる子の名前が記載されます。しかし不動産の真の持ち主は委託者のまま変わりはありません。受託者は信託契約書に定められた権限の範囲内で、信託不動産を管理・処分することができます。

信託により、受託者は、不動産の管理を担う者として登記簿の所有者欄に便宜上記載されるだけですので、贈与税等は発生しません。

複数の代にわたって資産承継先の指定ができる

遺言書では二次相続以降の指定はできませんが、家族信託では、二次相続以降についても承継者を指定できます。民法の定めを超えた財産相続の筋道を立てられるのも、家族信託のメリットといえます。

成年後見制度より、制約や負担が比較的少なくなります。

成年後見制度を利用すると、家族が被後見人の資産を自由に運用や管理、処分をすることはできなくなります。加えて、第三者である専門家が後見人となることも多く、第三者に財産管理や入院・入所手続を任せることに不安や抵抗を感じる方もいるでしょう。親族が後見人となった場合でも、家庭裁判所に提出する書類の作成など煩雑な事務作業を必要とします。成年後見制度を利用したくない場合、家族信託の活用も一考に値します。

詳細は下記のページをご覧ください。

認知症対策に家族信託という選択肢!成年後見制度と比較し、違いをご紹介

家族信託の注意点とは

ここまで紹介したように、家族信託には本人の意思が尊重されやすい、遺言書や成年後見制度ではできないこともできるなど、さまざまなメリットがあります。しかし、注意しなければならないこともあります。

そこで家族信託を活用する際の注意点を2つご紹介します。

家族の理解と協力

家族信託は親世代と一部の子世代だけで検討するのではなく、家族全員の合意のもと進める必要があります。

子世代の受託者が適正に親世代の財産を管理し、親世代のために財産を管理したり活用していくためには、関係する家族の皆が信託契約の趣旨や内容について理解するとともに、受託者を支援することが大切です。

よって、信託の検討を行う際には、出来るだけ多くの家族の意見も聞いた上で設計することが必要です。

素人が契約書を作成してはいけません。

書籍やインターネットには、家族信託の契約書例が掲載されていることがあります。

しかし、それらの契約書を真似て、法律の素人が信託契約書を作成すると、思わぬトラブルが降りかかる可能性がありますのでご注意ください。

契約書はプロの方に相談、作成をすることをオススメします。

家族信託を利用する際の手続き・流れ

注意点も踏まえ、家族信託を利用したいとお考えの方は、あらかじめ手続きや流れを確認しておきましょう。手続きや全体の流れを把握しておくことで、スムーズに進められます。

専門家に相談しましょう。

家族信託に詳しい専門家は少ないと言われています。しっかりと実務経験の豊富な専門家を探して相談しましょう。もし心当たりがなければ一般社団法人家族信託普及協会に紹介してもらうこともできます(下記詳細)。専門家から家族信託の詳細を聞き、家族会議もひらいて家族の同意を得た上で、信託設計案を作成してもらいましょう。

「信託契約書」を作成し、信託契約を締結します。

内容が決まったら信託契約書を作成します。公証役場で手続きを行い公正証書にすることが望ましい手段です。繰り返しになりますが「最初の話と違う」などのトラブルを防ぐために、家族間で慎重に話し合いをして、全員が納得をした上で作成してください。

不動産がある場合、信託登記を行います。

不動産を信託した場合、法務局で「信託登記」を行います。

信託専用の銀行口座を開設します。

受託者が信託財産の管理を行うための専用口座を開設します。

注意点:銀行では一般的にリーガルチェックが行われます。折角作った公正証書を変更しなければならないという事が起こらないように事前にチェックを受けた上で公正証書を作成されることをおすすめします。

家族信託を利用する際の費用

家族信託のご相談

家族信託を利用する場合、以下の費用が発生します。

  1. 家族信託の専門家へのコンサルティング報酬
  2. 公正証書の作成費用(公証役場の手数料)
  3. 司法書士への登記手続報酬(不動産を信託する場合)
  4. 登録免許税(不動産を信託する場合)
  5. 信託口口座の開設費用

 上記のうち1~4は、対象となる財産の価格や契約内容によって変動します。

家族信託の相談なら長野銀行

家族信託のご利用を検討されている方は、ぜひ長野銀行にご相談ください。

長野銀行なら、相続のお悩みや家族信託が必要かなどご相談いただけます。もし家族信託が最適な解決だとなれば一般社団法人家族信託普及協会の経験豊富な専門家をご紹介することもできます。専門知識が無くても問題ありません。さらに、原則長野県内にお住まいの方であれば家族信託預金口座の開設も可能です。一度お気軽にお申し付けください。

プロフィール

宮田浩志氏宮田浩志(みやた・ひろし)

司法書士・行政書士
宮田総合法務事務所代表。

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・任意後見等の仕組みを活用した「認知症による資産凍結対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。
特に家族信託のコンサルティング分野では先駆的な存在で、日本屈指の相談・組成実績を持ち、全国でのセミナー講師、TVへの出演依頼、新聞・雑誌への寄稿も多数。
著書に『改訂新版 相続・認知症で困らない家族信託まるわかり読本』、『図解 2時間でわかる!はじめての家族信託』など。

Webサイト

宮田総合法務事務所 

個人信託・家族信託研究所

一般社団法人家族信託普及協会